2020年度理事長所信

 

(一社)福知山青年会議所
2020年度 理事長
宇田川 鎮生

LOMスローガン

しなやかに挑め

~社会的価値を創出しよう~

 

【はじめに】

私たち(一社)福知山青年会議所は1964年の設立以来「修練」「奉仕」「友情」の三信条のもと、「明るい豊かな社会」の実現にむけ運動を展開しております。一方、社会経済状況は時代とともに変化し、市民の皆さまが求めるものは、物質的な豊かさを求めていた時代と大きく変わってきている現状があります。私たちは現代において「明るく豊かな社会」とは何か、福知山というまちの未来に必要なことは何か、大局的な視点に立ち今一度考えなければなりません。

福知山青年会議所の設立趣意書には次の一文があります。「余りにも進歩し過ぎた社会と共に、私たちは覇気に乏しき青年になり過ぎてはいないだろうか。」時代を超えて私たちの在り方が問われている、そう感じずにはいられません。責任世代として世の中のために行動し、社会をよりよい方向に向かわせ、後世へと引き継ぐ責務が私たちにはあります。誰一人として取り残さず、持続可能な社会を築き上げる使命が私たちにはあります。急速に変化する時代において、確かな正解はありません。時代を見極め率先して行動をおこし、柔軟な姿勢をもって新しい時代へのとびらをあける。青年としての英知と勇気と情熱をもって、しなやかに次の一歩を踏み出すときがきました。

 

【SDGsに則した地域に必要な人材開発と環境醸成】

スイスの国際経営開発研究所(IMD)の「世界競争力ランキング(2019年)」によれば日本の総合順位は64か国中30位と低迷しています。なかでも低かったのは起業家精神(アントレプレナー精神)でした。アントレプレナーとは教育によってのみ育まれるものではなく、環境や文化に大きく依存します。次世代を担う人材の育成は、ヒューマンスキルの醸成だけでなく、その前提として軽やかに挑戦できる環境づくりが不可欠なのです。また、アントレプレナー精神は、昨今の若手起業家の台頭もあり若年層向けに必要なものと考えられますが、事業の多角化や新規事業開発など、跡継ぎベンチャーの当事者ともなりえる地方の経営者や経営幹部の青年経済人にも必要な能力といえます。

経済学者のヨーゼフ・シュンペーターは「イノベーションとは既存技術の新結合である」と定義しました。つまり、古くから商工業都市として栄えてきた福知山が保有する様々な知見や技術に、起業家精神ほとばしるクリエイティビティを掛け合わせることができれば、イノベーションは促進し、新たな可能性が見いだされることは間違いありません。

本年度は、多様な視点から福知山の社会課題を整理し、最新のアクションラーニング形式により解決策を見出し、ビジネスの側面を含めて継続性のある主体をつくりあげます。人々が集い、市場からニーズを掴む思考プロセスや主体的に活動しながら周囲を巻き込むマインドセットを学ぶ場は、上質なコミュニティを醸成し、持続可能な社会につながる環境を創出します。折しも、2016年に開校した福知山公立大学には全国から優秀な学生が集まり、2020年4月には情報学部の新設も予定されております。高校や公立大学等との連携を踏まえたこれらの動きは、福知山において、次世代の若者が活躍する新産業の育成にもつながるものと確信いたします。

 

【広域的視点をもつ社会開発】

今年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されるだけでなく、福知山を舞台のひとつとした大河ドラマ「麒麟がくる」の放映もあり、日本、福知山に注目があつまる年といえます。そんな中、京都府の「京都府観光入込客調査(平成30年)」によると、南丹、中丹、丹後地域の観光消費額は、それぞれ138億円、69億円、177億円であります。これらは、世界的に人気のある京都に国内外から観光客が訪れている中で、福知山が位置する中丹地域は、外貨を稼ぐ力を十分に発揮できていない現状が見て取れます。一方で「イル未来と2019」のほか行政含め他団体による観光コンテンツは充実しつつあります。これからは、福知山を行政区単位で考えるのではなく観光圏として広域的にとらえた吸引力を発揮する必要があります。

本年度は、京都北部方面の豊かな自然や食、個性的なコミュニティといった観光資源に福知山を起点としてアクセスできる、特徴的で多様性のある観光プラットフォームを創出します。地域のもつ可能性を輝かせるためにも、まず自らがその土地を感じ、地域特有の尖った楽しみ方を発見し、需要を創造する。一過性のものではなく、持続可能な産業化も視野にいれ、私たちのまちを表現する。住んでいるものだけが知る体験や豊かさを伝えることは、関係人口の増加につながり、社会課題の解決をとおして地方創生の諸問題にもアプローチできるものと考えます。

 

【時代に合わせた組織基盤の再構築】

全国的にみて青年会議所会員は減少傾向にあります。福知山青年会議所においても今年度6名の卒業が予定されており、会員数の減少はより顕著といえます。しかし、この問題は今年度に限ったことではなくこれからも当会議所をとりまく問題でありつづけるでしょう。そんな中で、私たちがやらなければならないのは、会員減少を現象として捉えた上で、社会で活躍できる人材を育成する組織でありつづけるための、柔軟かつ発展的な組織改革の実践です。責任ある発言と主体性を伴う品格ある青年が結集する組織であれば、一緒に活動したいと思える仲間が必ず集まってきます。

本年度は政策立案実行団体としての実践とメンバーが有機的に機能するホラクラシー志向をもつ組織への改革をすすめます。これにより、一人ひとりの可能性を存分に引き出し、次世代を担う人材の台頭を支援し、組織の活性化と増強につなげてまいります。

 

【結びに】

昨年、私たち福知山青年会議所は創立55周年を迎え、積み重ねた時間を振り返り、私たちの原点を再認識する機会を得ました。それは先輩諸兄姉がまちづくりに情熱を惜しみなく費やし、困難に立ち向かい道を切り開いてこられた運動の歴史でした。今、この青年会議所を受け継いでいる私たちは、その責務を胸に刻み次の時代へとつなげていかなければなりません。

私たち一人ひとりが今一度、青年会議所の会員である意義を再認識し、品格ある青年としての本質を見極めて行動してまいります。その行動が人を惹きつけ、多くの仲間を集め、持続可能な社会にむけた礎となるのです。次世代にむけた責任世代であることをしっかりと受け止め、厳しい現実に立ちすくむことなく、しなやかに挑戦してまいります。

 

基本運営方針

  • 地方のもつ社会課題を解決する人材開発と環境の醸成
  • 京都北部の魅力を世界に伝える観光プラットフォームの創出
  • 時代に合わせた組織基盤の再構築
  • 京都ブロック協議会への協力
  • (公社)日本青年会議所、近畿地区協議会、京都ブロック協議会の事業への積極的な参加